院長のブログ

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糖尿病網膜症の病態にHIFはどのように関与しているか

2023年10月11日に開催されるエナロイ錠発売3周年記念WEBシンポジウムでの講演タイトルです。エナロイ錠というのは、低酸素誘導因子(hypoxia-inducible factor, HIF)という分子をある仕組み(HIF-PH阻害)で増やすことで 腎性貧血を治療する薬剤です。

HIFは1995年にGregg L. Semenzaによってその一つが発見され、Semenza氏はその功績によって2019年にノーベル医学生理学賞を受賞しています。HIFは、細胞が酸素不足の状況に対して応答する際にとても重要な役割を演じる分子であり、HIFが増加すると低酸素状態で細胞が生き延びるために必要な様々な分子がはたらき始めます。酸素を運搬する赤血球の産生に関わるエリスロポエチンもその一つですから、HIF-PH阻害剤は腎性貧血の治療薬として用いられているわけです。

そして、糖尿病網膜症や滲出型加齢黄斑変性の病態を悪化させるVEGFもHIFの下流に存在します。そのため、日本眼科学会からはHIF-PH阻害剤の使用によってVEGFが眼内で増加し、それらの眼疾患を悪化させるのではないか、という懸念 が表明されています。

HIF-PH阻害剤を服用すると糖尿病網膜症による重篤な視力低下が引き起こされるのかという疑問について、拙い知識ではありますが当日自分の考えを述べてきたいと思っています。ご聴講予定者が内科の先生方を中心に数千名と伺っており、少し緊張のweb講演です。


追記:後日伺ったところ、4400名の方々にご聴講いただいたとのことでした。ご聴講くださった皆様、どうも有難うございました。

登録日:2023年10月02日

糖尿病網膜症の病態にHIFはどのように関与しているか